こんにちは、ソラです。
現在、運送業界では、人手不足とドライバーの労働環境改善が課題となっています。
良く取りあげられているのは長距離の運転についてですが、鉱山や製鉄所、工場などの事業所構内の様な”限定的な空間”の運転も課題になっています。
例えば規模の大きい工場では、さまざまな場所が離れているためトラックやトレーラーを使って貨物のピストン搬送をしています。
ですが規模が大きい工場であったとしても、道路が広いとは限りません。
狭い場所を大きなトレーラーを事故を起こさず正確に運転するのは難しいですし、トレーラーの荷台の”曲がり”を考えたうえで右左折させる高度な運転技術が必要です。
この課題の解決策の1つとしてとして自動運転技術を取り入れることが考えられています。
自動運転システムは、長時間の運転に伴う肉体的・精神的ストレスを軽減するとともに、安全性と効率性を向上させることが可能です。
企業にとっても人件費を節約し、業務をより安全かつ効率的に行うことができるというメリットがあります。
また、企業の私有地内の様な限定された場所では周りに人や交通量が少ないので、”公道に比べれば”比較的自動運転システムを導入しやすいです。
なので、”限定された空間のみ”の自動運転は世界各国で開発が行われています。
今回はそのうちの一社、IHIが後付け式の自動運転システムでJFEスチールの製鉄所敷地内で自動運転の実証実験を開始した事について紹介します。
実験の内容
2023年2月、株式会社IHIとJFEスチール株式会社は、自動搬送システムの実証試験をJFEスチール東日本製鉄所京浜地区の構内で開始しました。
IHIは、トラックドライバー不足の解消と労働条件の改善を目的に工場構内運搬車の自動化技術の開発に注力していて、2019年度からはJFEスチールと共同で実運用に向けた研究を開始。
すでに走行・転回・停止に係わる基本的な自動化機能の開発に成功しています。
IHIとJFEスチールは,開発した自動運転システムを実環境で検証するため,京浜地区内の搬送ルート(約3km)の一部区間で,100トンの実貨物を積載したトラクタトレーラー用いた搬送試験を開始します。
また、ルート上へ標識設置したり信号機の制御を行うといった交通制御方法の検証も同時に行うようです。
自動運転システムの内容
IHIが開発した自動運転システムは既存のトレーラーに自動運転ユニットを後付けするものです。
このシステムはグループ会社である株式会社IHI物流産業システム(ILM)と共に開発していて、アクセル、ブレーキ、ハンドルを操作する制御ユニットと操作ユニットを車両内に設置して車両の操作を自動化、各種センサーで車両の位置や速度、障害物を検知し、あらかじめ設定した屋内外のルートを自動走行し、障害物との衝突を防止します。
そして装着対象となる車ですが、運転台(トラクター)と着脱可能な荷台(トレーラー)からなる重量物運搬車とも呼ばれる牽引式貨物自動車を採用しています。
まぁ、トランスフォーマーのコンボイみたいな車ですね。
仕組みとしては、LiDARで周辺の障害物を検知し、GNSSを使って自車両の位置と速度を把握。
衛星からの電波が届かない場合や不安定な場合は、LiDARの測定データと事前に取得した3次元地図データを比較して地図上の位置と速度を推定しています。
地上側の管制室が無線通信で制御装置に指示を出すと、車両は運転を開始します。
交通管制サーバーは交通の流れを監視・管理し、自動運転システムと信号機などを制御することで、交差点や横断歩道における交通整理をして、安全で円滑な走行ができる様にしています。
今後について
今後,IHIとJFEスチールは,JFEスチール東日本製鉄所京浜地区にて本システムを複数ルート,複数車両に展開し,革新的な生産プロセスを実現していきます。
IHIは、京浜地区で本システムの実証実験を行い、荷役機械や自動倉庫などの他の省力化機器と融合させ、業種や輸送物にとらわれず、お客さまの課題を解決し、社会の発展に貢献することを目指しています。
これらの検証により、より安全な輸送の実現と納得性の向上を目指します。同時に、周辺物体を検知するための車載センサーの数量や設置位置などの仕様も検討し、2023年度までに全区間で実証実験を完了することを目指します。
また,IHIとILMは自動運転システムの提供だけでなく、道路環境や車両運行ルールのリスク分析などのコンサルティングサービスや、製造工程全体の自動化システムなどのトータルエンジニアリングサービスを行う予定です。
最後に
トレーラーの自動運転の難しいところは、乗用車よりも高度な制御が求められる事ですね。
トレーラーは大型であるため、車線が狭くなり、高度な制御技術が必要です。また、荷台の曲がりを考慮した走行ルートの選択も必要で、乗用車とは異なる難しさがあります。
また、車両の値段が高い事も問題です。
IHIの後付け自動運転システムを搭載していたトレーラーはSCANIA(スカニア)製で、トラクターヘッドの価格は1500万円くらいするみたいです。
自動運転がついていないトレーラーでこの価格なので、自動運転システム付きのトレーラーはより高価になることが予想できます。
ですが、すでに持っているトレーラーに自動運転システムを追加で搭載すれば、大幅にコストを抑えながら自動運転の導入することができます。
今回は以上です、ここまで読んでいただきありがとうございました。
<引用・参考元>
・JFEスチール株式会社と京浜地区構内で,トラック自動搬送システムの実証試験を開始~構内走行車両および歩行者向け,交通整理方法の検証と受容性向上を目指して~
https://www.ihi.co.jp/ihi/all_news/2022/industrial_general_machine/1198124_3477.html
・工場構内における自動搬送システムを開発 ~既存トラックに自動運転ユニットを後付け,車両運転操作の自動化を実現~
https://www.ihi.co.jp/ihi/all_news/2021/industrial_general_machine/1197493_3349.html
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